SirilのCosmetic Correctionについて調べてみた

前回の投稿でSirilの処理について気になった所は全部検討できたと書きました。


が、もう1個よく分からない処理があるのを忘れていました。

cosmetic correction(CC)です。



やっている事はdocumentationに書いてあるので何となく分かります。


pixinsightと同じ機能と思っていて、ホットピクセルを星と誤認してしまう現象に対する解決策として紹介されていました。


悪い機能では無いハズなので、いつもはCCをかけています。





ただし、この処理では標準偏差で対象ピクセルを選ぶのですが、何個のピクセルが対象となっているのか分からなかった事と、その効果がイマイチ分かっていませんでした。


2ヶ月ほど前にSirilコマンドのfind_hotでbad pixle mapを出力しようとしましたがエラーばっかり出て何も出来ませんでした。

(たぶん私の操作が悪かったものと思います)




今回、find_hotを操作してみたところ無事動いたので検証してみます。



いつも使用している -cc=dark の処理では、マスターダークの中央値の偏差をとり、この偏差が3σを超えたピクセルをホットピクセルとして値を補正します(補正ロジックは不明)。

また、-cc=dark 3 5 の様に数値を指定するとクールピクセルは3σで、ホットピクセルは5σで判定するようになります。




では、いつもやっている無指定の条件で何個のピクセルが補正されているのでしょうか?

コマンドラインで調査します。



・・・27万オーバー!?

全ピクセルの1%を超えてしまっています。



5σでも約12万ピクセルが補正されています。

これでも全ピクセルに対して約0.5%が補正されてしまいます。



どれくらい補正されたのかを視覚的に認識しようと思います。

3σで補正されたホットピクセルを白で、クールピクセルを黒で、無補正のピクセルをグレーにした画像を作成しました。

ピクセル等倍で切り出しています。



黒は数が少ないので、ほとんど見つけらせません。白色は全面で恐ろしい数の補正が入っています。

これは… 嫌な予感しかしません。



documentationでも1%を超える場合は値を変更するようにと記載があるので、私の設定が悪く適切な補正が出来ていなかった事は明らかです。





では、CCの有無で画像の比較に入ります。



また、時系列ノイズ解析でホットピクセルの座標を特定しておき、この座標のみCCを入れる事もトライしてみます。

あぷらなーとさんのソフトウェアピクセルマッピングと類似の機能になると考えています。



以前、あぷらなーとさんの真似事で作ったpythonのプログラムを拡張して、範囲指定したピクセルの座標を、Sirilで読み込める形に変換して保存できるようにしました。


右のテキストウインドウがsirilで読み込める.lst形式のファイルです。



このノイズ解析グラフを見て右上にある点がホットピクセルです。

右上に赤い点がひとつ離れて存在している程度で、このカメラはホットピクセルの数が非常に少ない事が分かります。

この右上の点の座標を特定したので周辺を見てみます。






赤矢印で示すピクセルが、先ほどのグラフで出てきていたホットピクセルです。

ライトフレームから右は全てbayer drizzle前の画像になります。



ライトフレームでは、ホットピクセルの2ピクセル右に突発ノイズが発生しています。



このピクセルにCC無しでダーク減算(とフラット除算)を加える事で、真っ黒になりました。
カラーセンサーなので、RGBのうち1色だけ情報が欠損してカラフルな縮緬ノイズの原因になりそうです。

(ディベイヤーではカラフルな縮緬ノイズになりそうですが、bayer drizzleはどうなるんでしょうね?)




CCあり(3σ)では、ホットピクセルは正しく補正されているように見えますが、その2ピクセル上もホットピクセルと判定されて補正が入っています。


確かにダークフレーム上だと輝点に見えていますがライトフレームでは輝点ではありません。
ちょっと不思議ですが、ここは正常ピクセルの様に見えます。



正常ピクセルまで巻き込まれると、少し気持ち悪いですね。




時系列ノイズ解析のデータを利用してホットピクセルを除去すると、当然ですがホットピクセルだけを補正できています。





この結果を見て素人ながら感じたのは、ホットピクセルがドライバ等やハードウェア的に補正されて少なくなっているタイプのカメラはCCを行う必要が無さそうです。



もう一歩踏み込めば、ホットピクセルが原因と疑われる問題が発生した時、onにする機能と言っても差し支え無さそうです。








で、これが実際の写真にどう反映されるのか比較に移りますが…
bayer drizzle後の画像を比べてみましたが、バックグラウンドノイズの色が僅かに変わっただけで見た目に大きな影響はありませんでした💦



ここまで御託を並べたのに、変化が少ない結果でショックです。

また素人の浅知恵で恥ずかしい事を書いていたのか…と思いましたがbayer drizzleの影響かもしれません。





と言うことですディベイヤーの方も比較してみました。



左側がCCなし、右側がCCありです。


こちらも差が全く分かりません。



バックグラウンドノイズを拡大して見てみると確かに同じピクセルで若干色が変わっています。


逆に言えばその程度の差しかないと言う結果でした。




拍子抜けでしたが、私の環境ではCCの設定が不適切でも悪影響が大きくなかったのは幸いでした。








ひとまず今回の結論として、CCは何か問題が出たら実行してみる程度でokと思います。


ホットピクセルが多いカメラを使っている場合は、非常に有用なオプションです。



ただし使い方には少し注意が必要で、設定値を誤ると正常なピクセルが補正の巻き添えを食らってしまいます。


シグマの設定は、find_hotで対象となるピクセルの数を調査してから値を設定すべきです。








それにしても梅雨本番で全く晴れません。

撮影したいなぁ…




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